【思文会】その⑧~スニーカーびちゃ男との出会い編(後編)(豊島)
梅雨入りしたそうですね!
去年の11月から一人暮らしをしている私は部屋干しグッズを持っておらず、これまで雨の日をさけて洗濯物を干すという手段で乗り切ってきましたがそうもいかなくなりそうです。
梅雨が来る前に部屋干し環境を整えなければ!と冬から思い続けてもう6月。
追い込まれてから試合開始な性格をなんとかしたいです。
(前回の振り返り)
高校時代陸上少女だった私は、学校帰りの駅のホームで自称体育大学生という謎の男に話かけられる。誘導尋問によりホイホイ自分の情報を話してしまった結果電車に乗ってからも雑談を続ける羽目になったが、車内でふと男の足元をみるとスニーカーから謎の水がしみ出していたのであった…。
「あれ!なんでこんな水出てんだろう?」
私の怪訝そうな表情で自分の足元の異変に気付いた自称体育大学生。
足を動かすとスニーカーから水がしみ出してくる。それは、ちょっと水がかかったというレベルのぬれかたではない。例えば豪雨の日、深い水たまりに足をつっこんでしまってスニーカーがこれでもかと水を吸収したとき、歩く度にスニーカーから水がしみだしてくるあの感じである。
そして、スニーカー以外は一切ぬれていない。その日は晴天。…この人は、一体何に足をつっこんできたのだろうか…。
「・・・。あ、えーっと。それでさ~」
男は足元がずぶぬれな件をスルーして話を続けようとする。しかしながら正直もう何にも全然入ってこないし視線は足元のプチ水たまりに釘づけである。
怖い…怖すぎる…あとスニーカービショビショの人と一緒にいるの恥ずかしい…絶対こいつと知り合いだと思われたくない…
ここに来て自分がやばいやつに絡まれていることに気付いた私であったが、足元びちゃ男は私の真ん前に立ち、行く手を阻んでいる。扉前の角っこにいる私はどうにもこうにもその場から動くことができない。そして男は、足元で発生しているトラブルにもめげず日常会話を続けようとしてくるのであった。こちらはと言えば適当に相槌を打ちつつも、ドン引きしすぎて体は硬直状態である。
やがて電車が隣の駅に到着。幸いにもこの駅で乗り換えだったので、私は男に挨拶してそそくさと電車を降りようとする。地獄時間終了…かと思いきや
「あ、俺もここ!」
まさかの、男も一緒に下車。まじかよ。
「ねぇ、アドレス教えてよ。また会お!」
電車から降りると、男はそそくさと乗換改札に向かおうとする私に向かってこう言ったのだった。びしゃスニーカーを履きながら女子高生にアドレスを聞いてくる男。今考えるとまじでメンタルが強い。
「え…あ……」
怖すぎて硬直する私。
「赤外線ある?」
「あ……」
とにかく一刻もはやくこのびちゃ男から離れたい、そのためにはアドレスを教えるしかないと思ってしまった純粋な女子高生の私は、当時のアドレス交換方法として主流だった赤外線で男にアドレスを送信。送られてきた情報をチェックする男。
「あれ!阪神ファンなの!?」
…若干恥ずかしい過去なのであるが赤外線で送信された当時の私のアドレスは「win-hanshin-win@ezweb.ne.jp」。
星野監督率いる阪神タイガースに熱狂していた中学時代に主張の強すぎるアドレスを設定し、そのまま使い続けていたのであった。(※現在は使っておりません)
「じゃあ今度東京ドームに試合観に行こう!また連絡するから!じゃ!!」
そして男は、足元がびちゃびちゃであることをものともしない満足げな笑顔を浮かべ去っていった。
階段を上って見えなくなっていく男の背中を茫然と見送る私。しかしながら、ここであることに気付く。
あの人…また高校方面に戻る電車に乗ろうとしている…!!!
男は、今私たちが乗ってきた上り方面の電車のホームから颯爽と去り、そのまま迷いなく下り方面のホームへと続く階段をのぼっていったのであった。怖い、怖いよ!
結局、その日のうちに「阪神戦行こうね」的なメールが来たが、「彼氏が嫌がるから連絡がもう取れない」と完全なる嘘をついたところ(プロテインを飲み全身真っ青のジャージで登校していた私に彼氏などいなかった)すんなり返信が来なくなり、それ以来二度とびちゃ男とは会っていない。
だからなぜ彼のスニーカーがあんなにびちゃびちゃだったのかは今でもわからないままで、わからないからこそ、私はこのエピソードを一生忘れないだろうと思う。(完)
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