「あ、嘘ついた」(豊島)
もう土曜日!日々が一瞬で過ぎていきます。でも朝の風はどんどん気持ちよくなっていて、季節は確実に進んでいる感じ。
相変わらず日々の楽しみは植物たちです。トマトに加えてベビーリーフを育てているのですが、大好物のツルムラサキという野菜が挿し木で増殖可能という情報を得て即スーパーで購入しました。ついでに万能ねぎとルッコラもいけんじゃないか?と思い、その3種をグラスにつけて根が出るのを待っています。(ネギはもともと根が生えていたのですがたった半日でめちゃ伸びた)根っこが出たら土にさす予定。野菜たちがどのくらい成長したか、一日に何回もみてしまう。ベランダに出て、しゃがんで葉っぱを眺める時間がどんどん長くなってます…。
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私どちらかというとポジティブではないので、ギャーとなったとき後ろ向きになったときに加藤さんにつりあげてもらうことはしょっちゅうです。こちらこそいつもありがとうね…!
これからもお互い支え合いつつ、一緒につくることを楽しめたら嬉しいです。
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さて!今週は「あ、嘘ついた」がお題です。どうぞ~!
【 「あ、嘘ついた」 】
「あ、うそついた。」
「…え?」
「うそついたわ、俺。」
アイスコーヒーのグラスにささっているストローをつぶしたり、指先で曲げたりしていた課長は、突然顔をあげ、こう言ったのであった。
「え…」
僕の記憶が間違っていなければ、先ほどの沈黙の前まで繰り広げられていた話題は、「今年の正月はどのように過ごしていたか」というものだったはずである。
「嘘、ついたんですか…?」
「うん、ついた。うそ。」
「えっと…どういった嘘を…?」
「どういった…?まぁ、うん。」
…これは、聞いちゃいけないやつなのか。むしろ突っ込んだ方が良いのか。
「やぁー。でもしんどかったわ」
「はぁ」
「やっぱ久しぶりにやるとこたえるよね」
「あなんか、気が休まらないみたいな…」
「そうそう。結構緊張感あるんだよな、あれ」
「うーん、僕もかなり苦手ですね…すぐ顔にでちゃうんで」
「いや顔っつーかお前の場合ヒョロヒョロだからなぁ。もうちょい筋肉つけないと厳しいだろ」
「………え?」
しばしの沈黙。
「まぁ、あれ結構時間かかんだよな」
「時間…ですか?」
「そうそう」
「こう、相手を信用させるまでにというか」
「…信用?んー、まぁ、確かにコンビネーションは必要だわな。だんだんネバネバしてくるわけだから」
ちょっと待ってくれ、一体何の話をしているんだこの人は。何かのことわざか?
「でもやっぱ、頑張った分うまみもすごいよな」
「え、うまみ…手柄、的なことですか…?」
「手柄…、まぁ手柄っちゃ手柄だよな。もちろん最終的にみんなでわけるけど」
あれ…うそって、もしかして、嘘じゃない…?うそついた=もちついた的なやつか?部長はたしか岩手の出身だったよな。うそは岩手の郷土料理か何かなのか…スマホで検索したいがテーブルがガラスなのでやったら即ばれる。
「あ、へぇー、いいですねー」
「まぁまぁ、な。おまえんちはやんないの?」
「え?あ、いやうちはマンションなので…」
「あお前六本木だっけか?ギロッポンの高層マンションじゃやらないんだ?」
「あー、そうですね、なかなか…ははは」
…やんねーよ。これは嫌味なのか?
「そうかー、六本木の高層マンションとかでやったらすごそうだけどなぁ。ほら、やっぱ高さが必要だろ。うちなんて屋根の上に雪固めて、その上に脚立突き刺してなんとかやってるんだから」
「…え?」
「やっぱとばしたいもんなぁ」
高さ?飛ばす???待ってくれいよいよわからないぞ…うそってなんだ!うそ、うそ、ウソ…、なんか鳥でそんなんいたな…
「…あ、えーと、は、羽ばたくてきな…」
「いやぁ羽ばたくっていうかひゅんひゅんひゅんって感じだろ!羽ばたくって(笑)なんじゃそりゃ(笑)」
目の前の課長は何かのツボにはまったらしく、お腹を抱えながら笑っている。
ひゅんひゅんひゅんって、ひゅんひゅんひゅんってなんだ・・・うそ、うそ、う・そ、USO、USO…UFO!UFOの兄弟みたいなやつか???…いやいや冷静になれ、んなわけあるかい。
しんどくて、時間がかかって、ネバネバしてて、うまみがあって、みんなで分けられて、高さが必要で、ひゅんひゅんひゅん…しんどくて時間がかかってネバネバしててうまみがあってみんなで分けられて高さが必要でひゅんひゅんひゅん………ダメだ!全然わからん!!わぁぁぁぁぁーーー!
「おい木下。おい!木下!」
「………あ。は、はい!」
「どうしたんだよそんな汗かいて。眼鏡くもってるぞ。」
「あ…すいません」
「おいおい、お前の眉間マリアナ海溝かよ!ってくらいシワよってたぞ。ほらほら、午後もお客様のとこいくんだから、一旦顔洗って頭すっきりさせてこい!」
「…」
そして僕はトイレへと向かった。
そのときの僕はもう、うそのことなんかすっかりどうでも良くなっていて、「マリアナ海溝かよ!」という、課長の気になりすぎるフレーズに脳内を支配されていたのであった…(終)
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