「考える」(豊島)

こんばんは。涼しくて気持ちの良い夜です。最近は外からアマガエルの声が聞こえてきます。

今日はお休みだったので、朝から洗濯をして、ベランダで土いじりをして、ご飯をつくって、編み物をして過ごしました。編み物は夏用の帽子を編み始めたのですが、3分の1ぐらいまで編んだところで根本的な間違いに気付いて全部ほどきました…。ちきしょう!


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radikoのタイムフリー機能は私もめちゃめちゃ使っています。家事とかやりながら聞くのが好きです。普段芸人さんのラジオしか聞いてないけど、ジェーン・スーさんのラジオ気になるな。私が豆苗を育てたときは、高いところにおいて放置した結果育ちすぎて天井にはり付いてました。


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さて、今回のお題は「考える」だそうです。どうぞー!


「考える」

また来てしまった。もう何度目になるのだろう。


最近は仕事のない日には、必ずと言って良いほど来てしまう。そして、底の見えない暗い穴を覗き込んで、吸い込まれないように気を付けながら一日をすごすのである。


入場料の300円を受け付けのおじさんに支払って、人気のない、ひんやりした鍾乳洞の中に入る。


看板がかけられた様々な形の岩たち。だけど私はそんなものには目もくれない。いちもくさんに、だけど足を滑らせないように注意深く、あの穴へと向かって行く。


洞窟の奥、メインの通路からわかれた先を少しいったところに、それはある。


宙に向かってぽっかりと口をあけた、黒い穴。周りには冷気が漂い、ひんやりとしている。


この穴の前には柵がある。穴がどこへ続いているのか、どのくらい深いのかは誰も知らない。富士山の洞窟へ続いているだとか、地獄へつながっているだとか、色々な説があるらしい。


ただ一つどの説でも共通しているのは、落ちたら最後、戻って来れないということだ。だから立ち入り禁止の鉄の柵に加えて、その穴の上には木でできた格子状の枠がはめられている。この枠は明治時代に村人が設置したのだという。


いつものように鉄の柵に手をかけた私は、少し身を乗り出し、木の枠と枠の間から穴の奥を覗き込む。


そして、意識を集中して、絶対に見えない穴の先へ目を凝らす。凝らし続ける。目を凝らせば凝らすほど私の意識は穴の中に引きずりこまれていく。闇に沈み込んでいくような、溶け込んでいくような、私が闇になっていくような、途方もない気持ちになる。


この暗がりの奥にはどんな世界があるのだろうか。人間が知る由もない生物がいるのか、違う世界に繋がっているのか、海の底か、光の世界か、それとも、永久に穴なのか。


考えても考えても、想像は奥へ奥へと深まっていく。そこに行き止まりはない。


行き止まりがないことを考え続けるのは怖い。すごく怖い。


だけど、やめられないんです。とまらないんです。宇宙、感じちゃうんです。


もう一度私は身を乗り出し、穴の奥、底なしの奥にじっと目を凝らす。瞬きも忘れて目を凝らす。ドライアイの目が乾く。一度ぎゅっと目をつぶってまた目を開く。


「・・・あ!」


穴の周りには冷気が漂い、ひんやりとしている。(終)

あじさいの花好きです。鎌倉にみにいきたい。

次のお題は「カエル」にしてみます!

点と___web

加藤紗希と豊島晴香による創作ユニット[点と]のウェブサイトです。

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