「怒られて」(豊島)
暑くて溶けそうな日と雨でいやんなっちゃう日の繰り返しですね。手塩にかけて育てていたトマトの一部に虫がつき、それ以降猛烈に元気がなくなっています。暑いのは我慢するから、お願いだから毎日ガンガンに晴れてトマトを活気付けていただきたい。太陽さん、よろたのです。
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前回の加藤さんのブログ、とても大胆でしたね。からあげも大胆なからあげでしたね。
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私は今週もコツコツ書きました。是非読んでいただけると嬉しいです!
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お題「怒られて」
「はい。」「その通りだと思います。」「申し訳ございませんでした。」「以後気を付けます」
20分前から私は、まるでボタンを押すとランダムで声が出るおもちゃみたいに、この4つの言葉を適当なタイミングで発している。
私は今、上司に怒られているわけであるが、12分ほど前から話はほぼ聞いていない。とても大切な契約に関する書類を紛失したことが原因なわけだが、どこかに忘れてきたという、もうはっきりと私のウッカリが原因のミスについて長尺で説教し続けるっていうのは逆にすごいなと思う。
そんなことよりも上司のYシャツのボタンが一つずれていることに気付いてから私は、その隙間に心を奪われてしまっている。
神妙な面持ちでうつむく私の視線の先に、ちょうど上司の腹のあたりでたるんでいるそのYシャツの隙間がみえるのだ。
Yシャツの隙間の奥は、空色だった。上司の肌着は空色なのだろうか?いや違う。そこには広大な牧場が広がっているのだった。澄んだ空の下には豆みたいな牛がみえる。牛たちは牧草を食べているみたい。あったかそう。気持ちよさそう。上司はYシャツの下に牧場を隠していたのだ。すごい。
「どれだけ大事な書類かわかっているのか」「お客様の信用を失う」「会社の存続にかかわる」「おおげさじゃないぞ」
20分前から私は、まるでボタンを押すとランダムで声が出るおもちゃみたいに、この4つの言葉を繰り返ししゃべり続けている。
私は今、部下に怒っているわけであるが、12分ほど前から自分が何を話しているんだかほぼわからなくなっている。彼女は「契約書類の紛失」という事態の重要性についていまいちわかっていないようなのでなんとしてでも猛省を促したいところだが、「忘れてしまった」という原因に対する分析にも限界があり、もうだいぶ前から口が自動的に動いている状態なわけである。
そんなことよりも彼女の頭頂部につむじが二つあることに気付いてからわたしは、それらのつむじに心奪われてしまっている。
背の高い私が彼女に話しかけようとすると、うつむいて適当な相槌を打ち続けている彼女の頭頂部、そしてつむじが丁度視線の先にみえるのだ。
二つあるそのつむじたちは、少しずつ渦巻いているのであった。髪の毛がエアコンの風で揺れているのであろうか?いや違う。そこには深い深い海が広がっているのであった。渦巻くつむじへ流れ込む海水は白いしぶきを上げていた。気づけばゴウゴウと音を立てている、ような気がする。うるさそう、でも涼しそう。彼女は頭頂部に渦潮を持っていたのだ。すごい。(終)
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