「君に決めた」(豊島)

雨上がりの街が好きです。

なんだかにおいとか、ぬれた地面とか、傘ささなくてすんだラッキーな気持ちとか。

今日は午前中雨の中出かけたけど、帰りにはやんでいて嬉しかった。

ただしこのシチュエーションの場合、私は8割ぐらいの確立で傘を置いてきてしまいます。今日は家族と一緒だったから「傘持った?」と言われてギリギリ持って来れました。


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加藤さん、レッスン再開出来て良かったです…!子供達もきっとすごく嬉しかったんじゃないでしょうか。

思えば中学時代とか部活では何も気にせずに狭い空間に集まって汗を流し、試合のときはスポーツドリンク回し飲みとかしていたけれど、そういうのももう考えられなくなっているのだろうな…。

ほんとうに子供達が安心してのびのび体を動かしたり、好きなことを思い切りやれる世の中が早く訪れますよう…。


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さて、今週のお題は「君に決めた」だそうです。それでは、どうぞー!


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「君に決めた」

スー・スー・スー・スー…


隣からおかあさんの寝息が聞こえる。


ガー・ガー・ガー・ガー…


お母さんのそのまた向こうからはおとうさんのいびきが聞こえる。


ふとんに入って30分。このときを、息をひそめてまっていたんだ。


二人とも、ぐっすり寝たな。よし!行動かいし!

わたしはもぞもぞとおふとんの中にもぐりこんで隠していた懐中電灯をつける。


私の背中で盛り上がったおふとんは、キャンプのテントみたくなっているのかも。

ここは、わたしだけの小さな部屋だ。


カチッ!スイッチをいれる。手元でゲームボーイの電源ランプが赤く光る。

大丈夫、音量のメモリは一番下まで下がってる。


「ポケットモンスター緑」


わたしは今、これに夢中。まだまだずっとやってたい。


だけどお母さんに怒られちゃうから、おやすみなさいのときにこっそり布団の中に隠していたんだ。

起こさないように、ドキドキしながらわたしは冒険の世界に飛び出す。


いまわたしがいるのは「シオンタウン」。死んじゃったポケモンたちのおはかがあるまち。

本当はちょっと、ここ怖いんだ。お昼に一人でやるのだってちょっと怖い。

音楽だって、なんかちょっと不安な気持ちになる音だから。今は聞こえないけど、頭の中では再生されちゃう。


でもでも、布団の外に出たらすぐにお母さんもお父さんもいるし。だいじょうぶ、だいじょうぶ。


ゴソゴソッ


お母さんの布団のほうから音がした気がする。


慌てて私は懐中電灯を消して息をとめる。


・・・。


よし。大丈夫そう。ひやっとしちゃった。


いけないことって知ってるよ。だけど、このヒヤヒヤ感がたまらない。

シオンタウンも怖いけど、このドキドキ感もたまらない。

これが、わたしの毎日の秘密のたのしみ。くぅー!やめられないね!


―――こうして暗闇の中でポケモンをプレイすることにハマってしまった小学生の私。この幸せな時間のせいで視力が一気に低下し、眼鏡なしでは世界がボヤボヤになってしまうだなんて、当時の私は知る由もないのであった…。(終)

いまとある小道具をつくっていて、部屋が大変なことになっています。
次のお題は、「梅雨」でお願いします!

点と___web

加藤紗希と豊島晴香による創作ユニット[点と]のウェブサイトです。

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