「変わり果てた姿で」(豊島)
こんにちは!怒涛の9月末を、バイトのシフトをかえまくってギリギリ乗りきりました~。ほんとにバイト先には感謝です。昔通っていた劇団の養成所で、演劇を長く続けるためには良いバイト先をみつけることもすごく重要みたいなことを言っていたのですが、本当にそうだなと思います。
10月は加藤さんと私の生まれ月です。私も先日31歳になったのですが、なんだか1年前まで20代だったことが信じられない感じだったので、31歳のほうがしっくりくる気がする・・・。
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前回加藤さんが、「なるべく早く取り組んで、それに費やしたり考えたりする時間を長めに取れるようにしないと不安」って書いていたのをみて目からウロコが落ちました…!そうか、不安な気持ちがあるから早く取り組むのか!なるほど!と。これ当たり前じゃんって感じかもしれないんですが、なんだか自分の中の思考回路と回路そのものが違う気がして面白かったです。まぁもちろん、私もほおっておいて不安じゃないわけではないんですけども…
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さて、前回保留したお題「変わり果てた姿で」でお話をつくりました。
是非読んでみてくださいー!
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「変わり果てた姿で」
チョコレート。友達がくれたチョコレート。
赤い箱にはいって、きれいなリボンでまかれて、かわいいつぶが9つ並んでる。
一回あけたんだけど、もったいなくて食べれなくて、リボンは巻き直した。
デパ地下でバイトしてたから、チョロいもんだった。
特別な日、今日だ!と思った日に食べるって、ずっと楽しみにしてた。
その箱を、ついにあける。
特別な日だ!って確信したあの瞬間から、あたしの頭はチョコレート色。
ゴボウ・焼き豚・カレールゥ・アーモンド・ミソ・・・帰りのスーパーで、気づいたら茶色の物しか買ってなくて笑った。
箱の前に正座。片手を箱にそえ、もう片方の手でリボンの端っこをつまむ。
そぉ~っと、そぉ~っと。
スルン!と結び目がほどける。リボンを箱から取り去る。
心臓の音が聞こえる。ドク、ドク、ドク、ドク・・・。
両手を箱に。ゆっくりゆっくり引き上げ、蓋をあける。中には茶色の薄い紙が、扉のような形で彼らの姿を隠している。
オープン!
・・・茶色の紙を左右に開いた私を待っていたのは、9つに仕切られた枠がそれぞれ茶色の液体でみたされた目を疑う光景なのであった。
と、とけた・・・?そんなばかな!?
激しい動悸とともに眉間にしわを寄せていた私の耳にどこからともなく声・・・
「何をおどろいているの?僕だよ!」
「!?だ、だれ・・・?」
「忘れないでおくれよ、きみに会いに来たんだ・・・!」
その瞬間、9つの仕切りの中の茶色い液体がもぞもぞ波打ち、それぞれがせりあがり、9人の小さな人?なのかなんなのか曖昧な形の物体が姿をあらわした。
9人が一斉に私をみて、声をそろえていった。
「久しぶり!!!」
私は思った。え・・・だれ・・・
絶対、これまでの人生で会ったことない。だってこんなやばいの、100%トラウマになるから忘れるわけない。
「もおー、全然あけてくれないから体中がカチコチだよぉ~」
そういって、9人は一斉に自分の枠をまたいで外に出ていく。
彼らのあるいたところには、ドロドロのチョコレートの液体・・・。
一人が、テーブルから飛び降りて床に着地した。
ベシャ!白いカーペットに茶色いシミ。
「カーペットはダメ!!!!!!」
「え?」
おいおい白だぞ!冗談じゃないよ!
もうほんと、何が起こってるのか全然わかんない。私のワクワクを、楽しみを返せ!!!!
イライラした気持ちで白のカーペットをうろつく一番空気読めないやつをつまむ。
だけどやつらはドロドロだ。私がつまもうとしたら、つまんだところで分裂して、そのふたつのドロドロが並んで歩き出した。そしてわたしの指はチョコまみれ。最悪!!!
机の上では体をほぐそうとラジオ体操をはじめたやつもいる。そいつが腕を振るたび、チョコレートのしぶきが飛び散る。3人ぐらいのやつはテンションあがって鬼ごっこなんて始めてる。
そのとき一人だけ箱の外に出ずにモジモジしていたやつが申し訳なさそうに私に言った。
「ごめんなさい、チョコ食べるの楽しみにしてましたよね?私固まるので、よければどうぞ・・・!」
そういってそいつはするする枠の中で液体に戻り、次第に固まっていった。一度とけたので、若干白っぽくなっている。
「・・・いや、結構です。お気持ちだけ・・・・。」
これは無理。食べたくない。
私はベッドにダッシュして布団にはいり、目を閉じた。
これは夢だ、夢に違いない、そうだ夢だ!!!
眠るぞ、それで目がさめたらきっと・・・。
眠ることに集中しようとする私の鼻にはチョコレートの甘い香りが、耳にはベチャベチャと動き回るやつらの足音がずっとずっとしているのであった・・・・。(終)
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