梅雨入らず(豊島)
更新日グダグダ化現象を引っ張っている豊島です。今日も木曜日、すみません。。
東海地方まで梅雨入りして絶望的な気持ちになっていましたがなんとか関東は頑張っていますね…!今日は雨だったけど最近晴れている日も結構あって植物たちが元気です。日々葉っぱの形が変わっていくのが不思議だし面白いです。葉っぱめちゃめちゃ可愛い。
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オレンジ色の灯りいいですよね。わたしも好きです。部屋の灯りをオレンジに変えようか一人暮らしを始めてから迷い続けて今に至ります。オレンジだと本読む時とか暗くて目が悪くなるかなぁ〜とか、化粧するときよく見えなくて濃くなりそうだな〜とか。でもおしゃれな人は大体オレンジの電気で暗めの部屋に住んでいるイメージ!
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さて、連続ブログ小説第八回です。なんだか登場人物たちのことがだんだん好きになってきました。今回のお題は「転倒」だそうです。それではどうぞ〜
【 8 】
「23分05秒!やばいすごい!」
「18分02秒!あっはははは」
「36分24秒!まじどうなってんの?」
私の後ろからは妹の楽しそうな声が聞こえてきます。2時間ほど前まで混雑していた通りには誰もいなくて、車も通っていなくて、響くのは、私が自転車を漕ぐ音。そして妹の笑い声。
私は今、毎日一人自転車を走らせている道で、妹の重みを感じながら必死でペダルを漕いでいます。
計画は、日々積み重ねてきた私の自転車走行データをベースに、妹の体重46キロが加わった際私の走行スピードがどの程度落ちるのかを数値化して組み立てられました。町の端から端までに位置しているスーパーを目印に、もちろん到着予定時間は1分単位でスケジューリングされています。
わたしはどうしてもこの計画をやり遂げたくて、止まるわけにはいかなくて、今、私の全てをかけて、必死に足を動かしています。
小学6年生だったあの日、母に、妹と学校に行きたくないと言ったあの日。あの日の妹の表情は今も鮮明に覚えています。おしっこ行きたいって泣くから、忘れ物するから、転んで遅れるから。小さな妹ができっこないことを、私はどうしても受け入れられなかった。
わたしは時計になりたくて、学校までの道をきっちり予定通りに歩くことが、その時のわたしの全てだった。あんな目をさせてしまっても、その気持ちを乱されること、その希望を奪われることは我慢ができなかったのです。
だけど大人になった今なら、毎日自転車を超速で漕いで競輪選手のように太ももが発達した今なら、妹がおしっこを我慢できるようになった今なら、妹を乗せて一緒にやり遂げることができる。いや、何がなんでもやり遂げなくてはいけない。
体が熱くなってきました。額からは汗が吹き出し、はぁはぁとわたしの呼吸の音がします。だけど妹は楽しそう。わたしが計画通りスーパーの前を通り過ぎるたび、妹はケラケラと笑います。
さぁ、町の端っこのスーパー。ここから先は、わたしもチラシをチェックしたことがない、未知のスーパーたちが待ち構えるゾーン。
「あ!」
ドンガラガッシャーン。自転車が何かに引っかかり、わたしと妹は宙に投げ出されました。
目をつぶる、痛さを覚悟する、ところが…。
わたしと妹は、大きくて柔らかい何かの上に着地しました。
「葉っぱ…」
妹がつぶやきました。妹とわたしは、地面を一面覆うシダの葉っぱたちの上に横たわっていました。
「何これ…」
…そこは、草木が鬱蒼と生い茂る、広大なジャングルだったのです。(続く)
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