埴輪の秘密(豊島)
こんばんはー。もはやほぼ周回遅れになるのが通常営業みたいになってきてしまいました…申し訳ありません。
さてさて、大変嬉しいことに、なんと映画ライターの水上賢治さんに点とを取材をしていただきました…!水上さんは『泥濘む』がPFFで入選した際にも特集記事で触れてくださったり、いつも本当にありがたいです。全5回(!)のうち、まずは第1回目の公開です。ぜひぜひご覧ください!!
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利島、今年も無事開催されたようで何よりです〜。2年前、加藤さんとともに遊びに行きイルカを見たのは本当に良い思い出。来年の夏また遊びに行けたら良いなー。
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さぁ。連続ブログ小説、第16回。前回広げた風呂敷をどうしようと思っていたのか忘れるという緊急事態が発生しましたが、なんとかやりました。なんか勢いでめちゃ長くなってしまった。年内に終わるのか…!(多分私が毎回締め切りを伸ばさなければ終わる)お題は「歯止め」とのことです。どうぞ!!!(前回のストーリーはこちら)
【第16回 お題:歯止め】
その養鶏場では信じられない数の鶏が飼われていた。
お姉ちゃんは、コッココッコと鳴く大量の鶏の声の不規則性に気分が悪くなってしまったようで外で待っている。当然トサカNGのミキさんも、姉と一緒だ。
それにしても、メロンパンに使う卵用にしてはあまりに数が多すぎる…。これがもし全て盗まれてきたものだとすると、とんでもないリスクと労力がかかったはずだ。だけどこれが盗まれたのかどうか、どうすれば確かめられるのだろう?
「ピー助!ピー助!!!」
中林さんは、入ってすぐのところにいた鶏に泣きながら語りかけている。だけどそれは、この鶏たちが盗まれたものだという証明にはならなかった。なぜなら、昨日の夜中林さんが携帯で見せてくれた写真のピー助と、素人目にみても全然違う鶏に話しかけていたからだ。
「中林さん、本当にそれピー助ですか?ほら、スマホ見ましょう、スマホ」
中林さんは写真をチェックする。
「あれ?…は!お前、ピー助じゃない。騙された!目が、ちょっと似てたから。…あ!いた!!ピー助!ピー助!!!」
そしてまた別の鶏に語りかける。三度目で私は言うのをやめたのだった。
その時、向こうから歩いてきていた飼育員のおじさんが中林さんの姿を見つけるや否や慌てた様子で引き返したのを私は見逃さなかった。
「すみません!待ってください」
私は大声で引き止める。硬直したおじさんの背中。周囲のコケッココケッコという声だけがこだまする。その時、中林さんがすっとんきょうな声をあげた。
「アレェ?野上さんじゃないすかぁ。なんでぇ?」
野上さん。中林さんの住む町でエサの調合を工夫しながら毎日必死で鶏を育てていた、そしてその手塩にかけて育てた大量の鶏を盗まれた、あの野上さんがそこにいたのである。野上さんは、所在なさそうな様子でとぼとぼ歩いてきた。
「実はさぁ。鶏盗まれたって騒いでたろ?あのあと担当の人がきてさぁ。『これはスカウトです』っつって、こう言うんだよな。手荒なやり方で申し訳ないけど、どうしてもあなたのお力が必要で、先に鶏を連れて行きました、っつって。」
「そんな勝手なこと…野上さんは、それでいいんすか!鶏たちだって、家変わったらストレスになるっしょ」
「それがさぁ、この施設、うちなんかよりよほどいいんだよねぇ。やっぱ金かけてっから。実際見にきてみたら、鶏たちミーンな前よりでかい卵産んでんだよな。元気になっちゃって。あとここだけの話、これが良いんだよな、ここ。あとーふくりこうせいっての?あぁれもすごいんだから。かぁちゃんも喜んじゃって」
野上さんは、これが良いと言いながら、手をお金の形にしていた。
「中林くんとこのピー助、あそこで元気にやってるよ?いやいや盗んだのは俺じゃないから。でもピー助に聞いてみ?帰りたがらないゾォきっと。」
私は、自分勝手な物言いにイライラとしてきた。
「え?じゃあ、普通にここにいる鶏ってどっかから盗んできたやつなんですか?あなたはそれで良いかもしれないけど、ピー助を盗まれた中林さんの気持ちはどうなるんですか?」
「ヤーぁ。それはねぇ、申し訳ないけども。でも、多分そのうち中林くんとこにも担当さんから移住のお誘いが行ったと思うよ?誘われた人たちみんな最終的にはきてっから。もう移住者増加歯止めきかないっつって役所の人もてんてこまいだよ。だから結局、盗まれたって感じじゃなくなっちゃうんだよねぇ。断る理由ないもん、メロンパンでうるおってっから、この街。」
そんな私たちを尻目に中林さんは野上さんが指さしたピー助に泣きついていた。ピー助はものすごく暴れて、中林さんに触られるのを嫌がっていた。その隣の隣で、本物のピー助はその姿を白い目で見ていたのであった…。(続く)
こないだ加藤さんと行った美術館にあった埴輪。正面からはわからないけど、下から覗くとおっぱいが…。見つけた瞬間二人とも爆笑しました。
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