【思文会】タヌキとの遭遇編(前編)(豊島)
2月です。節分でしたね。こないだ駅に向かっている途中でお散歩中の保育園児が先生にしがみついて歩くのを拒否しており、どうしたのかなと思ったらマンションの柵にくっついていた10㎝くらいのちっこい鬼の飾りに怯えていました。しかもその柵から3メートルくらい離れたところで怯えていたので、逆に目ざといなと思いました。やっぱり自分が小さいとものすごく巨大に見えるのでしょうか?可愛すぎて笑ってしまいました。
(そのお面を撮影してアップしようと思っていたのですが、節分を2/4と勘違いして油断していたら2/3に撤去されてしまい撮れませんでした…。かわりにフリー素材の鬼の写真を。こんな可愛らしいのでした※一番下にあります)
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竹内里紗監督の映画「Mirror」の劇中で登場するさきちゃんの写真、オフショットを本人がSNSなどにあげていますがこれが本当に良いのでみなさんもぜひTwitterなど覗いてみて下さい。(さきちゃんTwitter)自然体な、さきちゃんの素敵なところが写真に写っているなぁと思います。
映画を見るのもすごく楽しみ。
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さて、企画をおなじみのやつにするために、恥を忍んで今回も「思い出を文章にする会」第二弾をやってみようかなと思います。
第一弾で書いたチキン投げつけられ事件は私の人生史で一番派手なエピソードなので、今回は地味です!…が、去年の出来事で1番印象に残っている、夜道でタヌキと遭遇したお話を文章にしてみます。
そしてやっぱり長くなっちゃう!今回も前後編です。ひっぱる話でもないんですがすみません。気楽にお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
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【夜道でタヌキに出会った話(前編)】
その日、私はいつもの道をうつむきながら歩いていた。駅から実家までの帰り道。今はもう引っ越してしまったが、小学生のころから20年近く行き来しつづけた、目をつぶってでも歩けるような道だ。日中うまくいかないことがあったので、沈んだ気持ちで体が重い。たまたまその夜は家に誰もいなかったので、駅前の大戸屋に一人入って定食を頼んだけれど食欲がわかずに残してしまった。私は落ち込むといつもご飯が入らなくなる。その日は久しぶりに食べられない日だった。
我が家は郊外代表多摩ニュータウンの住宅地にある。駅前は飲食店やショッピングモールがあり明るくにぎやかだが、通りを渡って少し入るとそこはもう静かな住宅街だ。住宅街を通り抜ける道は駅から家に至るまでで一番暗い。冬の夜には星がきれいに見えるから、ついつい一人顔をあげ汽車のようにホーッと白い息を吐きつつ、空に浮かぶオリオン座を眺めながら歩いてしまう。しかし、その日落ち込んでいた私はただただ、ぼんやりとうつむいて薄暗がりの中を歩いていたのだった。
住宅街を抜けて階段を降りると、その先にはドーンと大きな歩道橋が出現する。この長い橋は車道を横切るように作られているが、周りのアパートのベランダと歩道が同じ目線になってしまうためか柵がすりガラスのようになっており、歩いていると周りの景色は遮断される。その柵の内側には点々と明かりが灯っており、光の連なりはつきあたりのマンションに向かって続いていく。暗い住宅街を抜けて夜の闇に突然出現するその歩道橋は、何か宇宙船のようにもみえる。
私はいつものように暗い住宅街を抜けて、その歩道橋へ続く階段を下ろうとした。
そのときである。瞬間、私は誰かの強烈な視線を感じて足を止めた。…だが周りに歩いている人はいない。住民たちの通勤ルートになっているその道には大抵誰かが歩いているが、珍しく今日はひと気もなくてシン、としている。しかし、間違いなく何かの気配を感じるのである。私は息をのんだ。
そして、気配を感じたほう、歩道橋へ降りる階段のほうへ、恐る恐る目をやった。
・・・そこには、硬直したまま私をガン見している茶色い毛むくじゃらの動物。
私は、夜道でタヌキと見つめあっていたのであった。
私にみられたのが予想外の展開だったのか、彼は全身から「ギクーーー!」っというオーラを発して硬直している。こんな人通りの多い道にのこのこ出てきといて、人間と遭遇したことによりあからさまに動揺するタヌキ。
しかし、いつもの帰り道なのですっかり油断していた私もそんな間抜けなタヌキに負けず劣らず動揺し、その場で硬直してしまう。『平成狸合戦ぽんぽこ』にてタヌキを追いやったことでおなじみの多摩ニュータウンであるが、20年このまちに住んでいて、タヌキと遭遇したことなんて初めてなのだ。
がっつりと視線を交わしている私たちは、なんだかお互い目をそらすこともできず、動くこともできず、心の中は動揺しまくっている状態でただただ二人夜の闇の中かたまる。
一体何の時間なのかよくわからない時間をすごす私たち。
しばらくして、私はふと我に返る。
そして心の中に「このタヌキを、どうにかスマホで写真に収めなければ…!」という衝動が高まりはじめる。携帯を、カバンから、だしたい…!
しかし私たちはお互い微動だにせずみつめあっている。目をそらせば、ここで動けば、野生の動物である彼は身の危険を感じて逃げ出してしまうのではないか…?いや、でもなんとかして、撮りたい…!そしてTwitterに、あげたい…!意を決した私は、その長い沈黙を破り行動を開始する。タヌキの背後には、宇宙船のような歩道橋の明かりが点々と見えているのであった…(続く)
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