【思文会】タヌキとの遭遇編(後編)(豊島)
豊島です。先日より今月末に本番があるお芝居の稽古をしています。2/22(金)・2/23(土)に開催される「テアトロコント」というイベントのためのもので、私はわっしょいハウスという団体で出演させてもらいます。わっしょいハウスに参加させていただくのは初めてですが、小劇場に通い始めるきっかけになったような団体なので、緊張しつつも嬉しい気持ちで稽古しています。テアトロコントは芸人さん二組と、演劇二組の計4組が出演するショーケース的なイベントなのですが、毎回とても面白いのでお時間があったらぜひ観に来ていただけると嬉しいです。
詳細はこちら→ http://eurolive.jp/conte/
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先日加藤さんが書いていた、暁『ラストワルツ』、私も観に行きましたがダンサーのみなさんが凄まじくカッコよかったです。身体にくぎ付けでした。タップダンスを踊る紗希ちゃんの足はものすごい速度でカチカチいってました。私も小学生のとき憧れて、上履きを必死に床にうちつけていたことを思い出しました。紗希ちゃんのタップ力強くてとても魅力的でした…!
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それではちょっと間があいてしまいましたが、先週前編をアップした「夜道でタヌキに出会った話」の後編をお届けします。
(前編はコチラ)どうか最後までお付き合いくださいませー!
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【夜道でタヌキに出会った話(後編)】
(前回の振り返り)
上手くいかないことがあり、落ち込んだ気持ちで駅からの帰り道を歩いていた私。
ふと強烈な視線を感じて顔をあげると、そこには私をガン見する一匹の小さなタヌキがいたのだった。驚きのあまり硬直し、お互い視線もそらせずに見つめ合うタヌキと私。しかし私の中に「このタヌキを、写真に収めたい…!」という衝動がわきあがってくる。緊張状態をとき、タヌキを逃がさずに写真に収めることなど可能なのだろうか…思考した末に私は行動に出る…。
長い沈黙を経て、意を決した私はついに作戦にでる。
視線はそらさず、タヌキと見つめあったまま手だけ動かせばばれないんじゃないか?という作戦である。
目力強めでタヌキの目をにらみつけ、首から上だけ固定した状態でゆっくりと、カバンの中に手をいれる。
私の目をみているタヌキは、手の動きに気付いていないのか微動だにしない。よしよし。
そーっと手探りで、iphoneをつかみ、取り出す。
…しかし、どうしても、カメラを起動してシャッターを押すにはタヌキから目をそらす必要がある。さすがにこれをノールックでやるスキルは私にはない。
悩んだ末、私はなるべく首の角度を変えずに視線だけ落としてスマホのカメラを起動した。
タヌキの視界に入らないよう、スマホはみぞおちのあたり、首を動かさず見えるぎりぎりの位置にて操作する。
タヌキは動かない。
いけるか、これはいけるのか…!
ゆっくりと手を前にだし、タヌキにカメラを向ける。その瞬間…
トトト
タヌキが横の茂みの方向へ数歩動いた。やばい!逃げちゃう。私はカメラを向けたまま瞬時にフリーズした。
…すると、私が停止した瞬間、なぜか逃げかけていたタヌキは足をとめ、またパッと振り返り私の目をみて硬直したのだった。セリフをつけるならば「え?な、な、なんすか!?」といった感じである。ちょっと右にずれた状態で、わざわざさっきと全く同じシチュエーションを繰り返すタヌキ。
よくわからないがタヌキが止まってくれたので、私はかかげた手を固定したまま、親指だけそっと動かし、なんとかシャッターを押す。撮れた!
だが、画面に映し出されたのは薄暗がりのなかにある、なんだかもやした茶色い物体。ここにきて私のiphone5Sの画質の悪さが致命傷となる。暗い中この距離で闇と同系色のタヌキを撮影することは非常に困難なのだ。これじゃタヌキってわかんないよ!
しかたなく私は次の作戦に出る。徐々に徐々に距離を詰める作戦だ。ばれないようにソローっとゆっくり一歩前に出る。もちろん首から上は固定だ。表情一つ変えずに強い視線でタヌキの目をしっかりと捉える。
トトト
作戦もむなしく、私の動きに気付いたタヌキはまた茂みの方へ進みだした。
慌てて足を止める私。今度こそ逃げちゃうか…?!
だが、私が止まった瞬間やっぱりタヌキも動きをとめ、またパッと振り向きこちらを見る。
私がまた前に出る。
トトト
タヌキが逃げる。
私が止まる。
タヌキもとまってとこちらをみる。
私が動く。
タヌキが動く。
私が止まる。
タヌキも止まる。
恐らく、これを数回繰り返したと思う。一体何がしたいんだ、お前は。
念のためにいっておくが、タヌキの近くにある茂みは柵の向こうにあり、その気になればタヌキは多分3秒ぐらいで逃げこむことができる。いや、そろそろ逃げなさいよ。
挙動不審すぎるタヌキがだんだん面白くなってきて、途中から私は誰もいない夜道でヘラヘラ笑いだしてしまった。多分外から見たら結構やばい人だったと思う。
最終的には私が大きく距離を詰めようとしたところついにタヌキは茂みに去って行ったのだが、そのころには私の落ち込んだ気持ちはどこかへ吹き飛んでしまって、タヌキのチャーミングさの虜になっていたのであった。
本当に動きが人間的で、空き巣に入ったらこたつでお茶飲んでる住人と目があった、みたいな間抜けさをかもし出していたタヌキ。これは昔の人がタヌキが人に化けると考えていたのも納得である。
タヌキが茂みのなかに消えていくのを見送って、宇宙船の歩道橋を歩いていく私はまだヘラヘラと笑いながら家に向かう。確かそのとき、一人何かを叫びながら全速力で走りさっていくやばめな男性がいたのだが、この世界にあるヘンテコな物全て愛おしく見えるモードの私はそれすら微笑ましく見送ってしまう。
不思議なのはいつもあれだけ人通りのある道で、タヌキと過ごした数分間は誰一人その道を通らなかったことで、タヌキの背後にみえる橋の景色もあいまって、思い返すとなんだか時空が歪んでいたような、SFっぽいような、そんなことを感じたりする。
帰宅後、タヌキの挙動不審な動きが忘れられなかった私は、誰もいないリビングで一人、逃げそうで逃げないタヌキの動きをひたすら練習したのであった。(完)
※その時撮った写真。Iphone5Sの限界を感じますね…。
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