【思文会】投げつけられたチキン編(後編)(豊島)
豊島です。寒いですねー。寒いとほんとうに動きたくなくなるし、冬はいくらでも寝られる気がするので、自分は変温動物(カエルとかヘビとか冬眠する系)なんじゃないかとよく考えます。あったかいお茶とみかんの組み合わせは冬のだいご味ですね。
私は人におすすめされたものに手を出すまでにとても時間のかかる人間で、映画とかはすすめられても観ようと思ってるうちに大抵終わってしまうのですが、先日さきちゃんが紹介していた「ひかりの歌」は周りの人がみんな絶賛しているので見逃すまい!と思っています。今週いこう。
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さてさて、それでは豊島の過去をネタにする企画、【思い出を文章にする会~その①投げつけられたチキン編(後編)】を書きたいと思います。
<前編はコチラ>
最初に言っておきますが「チキンを投げつけられた話」なので投げつけられた瞬間がこの話のピークです。つまり、一番盛り上がる部分は先週終了しております。区切るところを間違えた気がしています、すみません。しかしながらこの話、その後にもう一波乱あったので、どうか最後までお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
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【フライドチキンをなげつけられた話②】
(前回の振り返り) 正月明けでボーっとしていた私は、お客さんの「足の部分しばりで5本」という注文を笑顔で承りながら、よりによってきれいに足の部分以外のフライドチキン5本をチョイスしつめてしまっていた。いわゆる、うっかりミスである。そして怒りにまかせて投げつけられたチキンはお客さんの強肩によって剛速球と化し、ショーケースに激突して無残にもぶちまけられたのであった…。
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さて、問題はここからである。お怒りになった男性は返金は求めず、いささか暴力的ではあるがチキンだけ返品して出ていった形になる。つまり、お金を払うだけ払ったのに手ぶらで帰ったということだ。「もういらねーよ!」と吐き捨てて去っていったのでこれで良いのだろうか…?
もちろん、そんなことある訳がない。ほどなくして店の電話が鳴った。先ほどの男性から怒りの電話がかかってきたのだ。奥のキッチンに入っていた店長が出てきて対応してくれる。まぁ、そりゃやっぱり「今すぐ自宅までチキン届けろこらぁ!」という話になったらしく、店長は寒空の下バイクにまたがりチキンデリバリーに向かったのであった。
この一連の話は今でこそネタでしかないが、当時ハタチだった私はさすがにおびえ、しょんぼりし、店長の帰りを待つ間汚れた床を掃除しながらシフトリーダーの先輩に励ましてもらったことを覚えている。 (だがしかし翌日には友達に「昨日やらかしちゃってさぁ~」とヘラヘラ話していた気もする。どうしようもない野郎です。)
そしてベトベトだった床やショーケースの掃除もなんとかおわり、また定位置のカウンターに一人立ちながら店長を待つ。………時間がすぎる。お客さんは来ない。…更に時間がすぎる…またすぎる、すぎる、すぎる…。しかし、店長が、なかなか帰ってこない。やばい、そうとうお客さん怒ってるのかなぁ…なんかモメてたらどうしよう…あー、やっちまったなぁ。
今か今かと店長の帰りを待ち続ける私たち。店は静けさにつつまれている…。
しかし、その沈黙を破ったのは、店長の帰還ではなく予想だにしない一本の電話であった。
「おいこらぁぁぁぁ!!!サラダが入ってねーじゃねーかよぉぉぉ!」
声の主は先ほどの男性。え、、、なんでうそやん、さっき店長、サラダ持ってたやん、、、
シフトリーダーが必死に謝罪する。しかしますますボルテージがあがった男性の怒りは収まらない。店長が帰ってくるまで電話を切らせないと言っている。
シフトリーダーがそのまま電話を切らずしゃべり続けたのか、はたまた説得して一度電話を切ったのか、無責任ながらそこはちょっと忘れちゃったのだが、ともあれしばらくして店長が帰ってきた。バイクで寒風に吹きさらされたため唇は真っ白である。すぐに店長が電話で男性に謝罪する。
ことのあらましはこうだ。店長は、間違いなくチキンとサラダを手に男性宅を訪問した。しかし、チキンは温かく、サラダはつめたいのでビニール袋をわけて持って行った。男性宅に到着した店長がインターホンを押すと、怒り心頭で出てきた男性は店長の手からチキンパックの入ったビニール袋をむしり取った。そして次の瞬間、店長がサラダのビニール袋を渡す間もなくバタン!!!と玄関のドアを閉め、その後店長が何度ピンポンを押しても男性が出てくることはなかったのである。サラダを手にその場に立ち尽くす店長…。結果、もはやなすすべもなく、しかたなくサラダだけ持って店へ帰ってきた、ということなのであった。もちろんその後、店長は再度サラダを届けにお客様宅へ向かっていったのだった…。
以上が、私の人生史に燦然とかがやくベスト…いやいやワーストエピソードのあらましである。ご迷惑をおかけした方々、本当にすみませんでした、もう少しちゃんとした大人になりたいものです…。と、反省の意を表しつつ、いやぁ私バイト先でチキンなげつけられたことあってさぁ~もうほんっと大変だったのよ~!と人にしゃべりまくった10年間であった。
ちなみに、以前入っていた演劇の養成所で3分の自作自演の芝居を上演する、という企画があり、何でもいいからシェイクスピアに関係するものを作品に取り込むというお題があったのだが、私はこの一件を題材に「チキンデリバリア王」という一人芝居(パックミスをしたアルバイト店員がお客さんの家からもお店からも締め出され荒野で発狂する話)を上演したのだった。(完)
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2019.01.28 14:20
2019.01.28 10:50