【思文会】金に目がくらんだ引越しバイト編(中編)(豊島)
今週はどうしちゃったのかと思うくらいの冷え込みでしたねー。
今私は北池袋にあるくすのき荘という木造建築にて上演しているお芝居に出演しているのですが、半野外のような空間のため、木曜金曜の夜は本当に鬼のような寒さでした。
この公演、去年の11月に上演した作品の再演で、暖かい季節に再演…の予定だったのですが、11月より俄然さむい…明日からは暖かくなるとのことで、期待しております…!
ちなみに詳細はこちらです。食パンをテーマに、地域のパン屋さんやコーヒー屋さんに協力していただきながら作りました。もしよければ是非お越しください!!
http://harapeko-fullmoon.com/okawari_shokupan1/
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前回のブログ、加藤さんが、美容室の椅子に座りながらそのお客さんを見つめている姿が目に浮かび私も一緒に切ない気持ちになりました…。でも美容師さんも、大変な職業だなぁ…。
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さて、思い出を文章にする会、略して【思文会】引っ越しバイト編ですが、上手くまとめられずついに3部作になってしまいました。今回は中編です。若干エピソードのパンチが弱い疑惑が浮上しておりますが、自分としては印象深い思い出なのでお付き合いください~!
※前編はコチラから
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【思い出を文章にする会~その⑤金に目がくらんだ引越しバイト編(中編)】
(前回の振り返り)
お金がなかった演劇養成所時代、高時給の日雇い引っ越しバイトを見つけた私は金に目がくらんで応募してしまう。
そして当日、現場で待ち構えていたのは私に冷徹な視線を投げかけるベテランアルバイターの姿であった。
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バイト当日。ドキドキしながら待ち合わせ場所で待っていると、某引っ越し屋の巨大トラックが目の前に現れた。街中でよく見かける、デカデカと0123と印字されているあのトラックである。
そしてゆっくりと停止したトラックの扉が開き、中から一人の若者(推定20歳くらい・坊主頭)がおりてきた。どうやら派遣ではなく、この引っ越しセンターで直接雇われているベテランのようである。彼は、本日の助っ人となる派遣バイトが全く戦力にならなそうなヒョロッヒョロの女(私)であることを認識し、舌打ちでもせんばかりのオーラを醸し出しながら冷たい視線を投げつけている。やばい、完全に歓迎されていない…、
「とりあえずそこにある制服に着替えて。それの下にこれ着て。」
表情一つ変えずに私に指示をするベテランアルバイター。
とりあえず言われるがまま引っ越しトラックの積み込み台に乗り込み、扉をしめて緊張しながら着替えを開始する私。某引っ越しセンターおなじみの、テレビでよくみる青いユニフォームに袖を通す。
…ところがここで私の悪い癖が出る。怖い人に圧を加えられると、ビビりすぎてミスをおかしがち。
着替えを終え荷台から降りてきた私をみて、彼はため息をつきながらこう言い放ったのだった。
「いやだからぁ、下にこれ着ろって言ったじゃん!」
「はっ!す、すす、すいません~…!」
私はしょっぱなから制服の着方をミスり、ベテランアルバイター君のイライラ指数を上げてしまったのであった。
その後大焦りで着替え直し、運転席と助手席に挟まれた補助席に乗り込んで現場へ出発。幸い運転席で待っていた社員さんは優しそうなのでほっとするも、左からはビンビンにイライラオーラが伝わってくる。途中でもう一人の男性派遣アルバイトを荷台に乗せこみ、トラックは走っていく。
そして目的地、昭和の香り漂う平屋に到着。まずは積み込み作業である。到着後すみやかに挨拶をすませ、畳の部屋に並べられた段ボールをガンガン外へと運びだす社員とベテランアルバイター+男性派遣バイト。
…薄々そんな気はしていたが、現場にある段ボールはすべてきれいに閉じられており、荷造りは完璧に終了していた。引っ越しバイト経験者の女友達が言っていた、女の子が任されるはずの梱包作業は一切残ってない。ここに存在するのはガチンコの力仕事のみである。
優しそうだった社員さんも無言ですごい重いものを渡してくるので容赦ないなと思いつつ、落とすわけにはいかぬと腰を入れ必死に段ボールを抱きとめる。受け取った荷物を台車につみ、トラックの前までヨロヨロと運んでいく。
そしてなんとか積み込み作業を終えて再びトラックに乗り込んだ私たちは次の目的地、引っ越し先の新築物件へ。
到着早々、今度は次々とトラックの荷台から荷物を積み下ろしていく男性陣。社員さんがトラックの上から荷物を手渡し、下にいるバイト陣がそれを受け取って玄関先に卸していく。私も参戦せねば…と思いつつ、男性二人が荷物を置いたらすごい速さで戻ってきちゃうのでなかなかサイクルに入ることができない。
気持ちだけは前のめりな姿勢を持ちつつ、形的にはひたすらボーっと横で眺めていたところ、指一本荷物に触れないまま積み下ろし終了。
そのまま全体の流れに乗って室内に入ったところ、ベテランアルバイターが不機嫌そうに私を呼び、謎のビニールのようなものを渡してきた。
「この○○シート床に3枚ずつ並べといて」
それだけ言い残してさっさと別の部屋へ行ってしまったベテランアルバイター。
○○は聞いたことのない用語すぎて全く覚えていない。
床に3枚ずつならべる…?そもそもこれ何用…?と混乱しつつも、男性陣は全員別の場所でガツガツ作業を始めてしまったので声をかけられる感じではない。
…しょうがないので勘を元に作業開始。床に3枚横並びで謎のシートを並べ、ちょっと離してはまた3枚横並びで並べ…を繰り返す。床に広がっていく謎のシート。
全部並べ終わると、フローリングは隙間の部分以外ビニールで埋め尽くされテッカテカになっていた。終わった終わった。ふ~。
…だがしかし。その後戻ってきたベテランアルバイター(坊主頭・およそ20歳)は、シートまみれの床をみて顔をしかめ、声を荒げたのであった…(続く)
現在公演中のはらぺこ満月『SHOKUPAN1』の会場であるくすのき荘。通りに面した窓ガラスの向こう側では、毎日様々な日常が繰り広げられます。
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