【思文会】金に目がくらんだ引越しバイト編(後編)(豊島)
こんばんは!やっと、やっと暖かくなりましたね…!ばんざーい!
このくらいの季節の、夜の湿った空気みたいなものが大好きです。
桜はもう散ってしまいましたが、うちの近所は八重桜がとてもきれいに咲いています。丸っこくてモコモコしたフォルムがとてもかわいいのです。
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加藤さんの1週間、色んな「打ち合わせ」をすごく頻繁にしていますね。「打ち合わせ」ってなんかかっこいい。バリバリ働いている感じがする。私も「打ち合わせ」したい。
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さてさて、やっと引っ越しバイト編完結です。たった3、4年前の話なのですが、ザ・若気の至りという感じで恥ずかしいです。現在は安定した職場を見つけてちゃんと稼いでますので。。。ではどうぞご笑覧ください…!
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【思い出を文章にする会~その⑤金に目がくらんだ引越しバイト編(後編)】
(前回の振り返り)
お金がなかった演劇養成所時代、高時給の日雇い引っ越しバイトの募集を見つけ金に目がくらみ、応募した私。
ついに当日を迎え現場へ向かうもなれない作業にミスを連発。そもそもヒョロヒョロの身なりからして引っ越しバイトとしてはポンコツ感のあった私は、その第一印象を裏切らない仕事ぶりに、ベテランアルバイター(推定20歳・坊主)から完全に目をつけられたのだった。
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中編はコチラ
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「はぁ?お姉さんまじで何やってんの!?」
ビニールのシートが敷き詰められ、テカテカ光を反射している床をみた瞬間ベテランアルバイターは声を荒げた。
「床に3枚づつ並べろ」と言われたので、3枚横並びで用途不明のシートを並べ、ちょっと離してはまた3枚横並びで並べ…を繰り返して床をシートで埋め尽くした私。しかしながら、実際のところは必要枚数をすぐ他の部屋に持っていけるよう、ただ3枚ずつ仕分けすればよかったらしい。
「いや普通にわかるでしょ!」
床に広がったシートを回収する手間が増えてしまい、彼のイライラ指数はもう一段階上昇。
3枚ずつ分けるだけで良いならもっとうまい指示の仕方あるやろ…!という気持ちをぐっと抑え込み、私はベテランアルバイターにひたすら謝ったのであった。
そして、1件目のお引越しが無事終了。お昼休憩である。
このあたりで美味しいと評判の定食屋さんに是非…と社員さんが声をかけてくれ、再びトラックに乗り込んだ私たちは住宅街のお店へと向かった。
店の空き状況を確認してくるということで、道路脇にトラックを停車したのち一人降りていく社員さん。バタンッ!と閉まるドアの音。フロントガラスから、社員さんが道路を横切って向こう側の定食屋へと走っていくのが見える。
「・・・・・・。」
…静かになった車内。ウィンカーの音だけが聞こえている。
そう、私は朝から完全に睨まれていたベテランアルバイターと、車内で二人きりになってしまったのである…
気まずい。気まずすぎる。自分に対してイライラしている人と密室で二人きりなど、拷問に近い。これは、なるべく存在感を消して空気になるしかない…。私はだんまりを決め込んだ。
そのとき
「お姉さんさぁ…」
ベテランアルバイターはフロントガラスをじっと見つめたまま口を開いた。
「ヘ…!?」
まさか話しかけてくるとは思っていなかったので、戸惑う私。
沈黙。
なんだ、いったい何がはじまるんだ…。
「…今日、派遣会社に仕事振られていやいや来たんだろうけどさぁ。一応、お金貰ってるわけでしょ?お姉さん、はたからみてもめちゃめちゃやる気ないから。仕事なんだから。もうちょっとちゃんとやりなよ。大人なんだからさぁ…」
「あ…やる気なく、見えますか…」
「見える。みんな思ってるよ多分」
「………すいません………」
豊島晴香26歳、てんびん座A型。多分学生と思われる20歳ぐらいの若者(下手したら10代)に社会の基本ルールについてお説教をされている、なう。
「大人なんだから、お金もらってるんだからちゃんと働けよ」と当たり前すぎることで怒られている、なう。
この残念すぎる状況に、口元にはうっすらと笑みが浮かび、脳内では中島みゆきの『時代』的なバラードが静かに再生されたのであった。そして派遣会社に割り振られたわけではなく自主的に引っ越しのバイトをチョイスしたなんて、もちろん、言えるはずもないのだった…。
この数分間の出来事が衝撃すぎてその後のことがボヤボヤしているが、私は食欲がわかず定食屋には行かなかったのだと思う。トラックの補助席で一人ぼそぼそとパンか何かを食べていた記憶がある。
結局確かもう一人の派遣バイトも定食屋にはいかず、行ったのは社員さんとベテランアルバイターの二人。しかし不思議なことに、ご飯を食べて帰ってきたベテランアルバイターはなぜかほんのり優しくなっていたのだった。よくわからないが次の現場では朗らかに声をかけてくれたり、私に荷物を手渡してくれたりするようになったのである。
これは憶測にすぎないが、定食屋で社員さんに私への不満を言ったところ諭されたとか、なんかそんな感じじゃないかと思っている。そうだとしたら案外素直でかわいいベテランアルバイター君。が、真相は定かではないし、そもそも優しくなった気がしたこと自体勘違いだったかもしれない。あと実際に引っ越しバイトに不向きだったことも間違いないので、(体育会系の空気感とか苦手。。。)やる気がなかったわけではないがチョイスミスであったことには心底反省である。
兎にも角にも、なんとか午後の仕事も終えて無事生還した私は、帰るころにはもうゲッソリなのであった。
そして翌日、引っ越し会社から「先日は本当に助かりました。人が足りないのでぜひまたシフト入ってくれませんか?」とまさかの電話がかかってきた。おそらく現場を知らない事務の人がなりふり構わずシフトを埋めようとしていたんだと思う。
しかしながらもちろんのこと、「すみません、都合があわず~」と断り、全身筋肉痛の体をさすりながらこんなの一生やるものか!と心に誓った私なのであった。(完)
先日久しぶりに加藤さんとカラオケにいったのですが、チャットモンチーを歌う加藤さんは色んな意味で爆発していました。
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